網膜・硝子体の日帰り手術
硝子体は、眼球の中にある透明なゼリー状の組織です。硝子体は、混濁や出血を起こすことがありますし、網膜を引っ張って傷付けることがあります、そうしたことによって視力の大幅な低下につながることがあります。硝子体手術は、硝子体の出血や病原体、あるいは混濁などを起こした硝子体自体を除去して、症状改善を図るものです。
日帰り網膜・硝子体手術
網膜は、目に入ってきた光の情報を受け止めて視神経に伝えていて、カメラでたとえるとフィルムやCCDのような役割を担っています。網膜に影響が及ぶ疾患になると、視力の大幅な低下、視野の大きな欠落、失明などを起こす可能性があります。硝子体の疾患も網膜に重大なダメージを及ぼすものが多く、それ以外でも見る機能を大きく損ねる疾患があります。
アルコン社 コンステレーション®ビジョンシステム
黄斑前膜、黄斑円孔、網膜剥離、糖尿病網膜症などに対する最新の硝子体手術機器です。白内障手術もあわせて行うことが出来ます。安全性、効率性に優れ、極小の切開創からの手術が可能です。当院では主に25Gでの手術を行っており、創口が小さいため、縫合せずに手術を終了することがほとんどです。
網膜・硝子体手術は、眼球の中に照明用光ファイバーを挿入して照らし、硝子体吸引器具を入れて顕微鏡で緻密に観察しながら行っていきます。当院では、日帰りでこの手術を受けていただけるようにしていますので、日常生活や仕事などへのより早い復帰が可能です。
費用について
硝子体手術は保険適用されます。ご紹介しているのは目安の金額です。使用薬剤などにより費用は異なります。
保険種別 | 自己負担額 | |
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高齢者医療 | 1割負担の方 | 18,000円程度 |
2割負担の方 | 18,000円程度 | |
健康保険 | 3割負担の方 | 120,000円~130,000円程度 |
麻酔と手術
当院では白内障・網膜・硝子体の日帰り手術のすべてを、経験豊富な院長(眼科専門医)が行っています。使用する医療機器も最新の高度なものであり、繊細で精緻な手術が可能になっています。
麻酔は、点眼麻酔、そしてテノン嚢下麻酔を行います。これにより、「触れられている」という感触はありますが、痛みはほとんどありません。手術中の会話もできますので、気になることがありましたらすぐに医師へ伝えることができるため、安心感があります。
手術時間は、30分から1時間程度が目安です。状態などによって変わりますが、進行した網膜症の場合には時間が長くなる傾向があり、難症例になると2時間を超えることも珍しくありません。
硝子体手術が必要になる主な疾患
当院では硝子体手術の約9割の症例が「網膜前膜」と「眼内レンズ脱臼のレンズ交換」となっております。
網膜前膜(黄斑前膜)
年をとるにつれ硝子体が収縮して眼底の網膜から離れる際に、硝子体の一部が網膜の表面に取り残されることで視力低下や見ているものがゆがむといった症状を起こす病気です。
以下の写真で、右側の写真の中央に白い膜があるのがおわかりになるでしょうか?これがあることで、カメラのフィルムに膜が貼ったようになり、ひいては上図のように、ものが歪んで見えてしまいます。
治療のためには、この膜を硝子体手術で取り除く必要があります。
当院では日帰り硝子体手術を多数行っておりまして、入院が不要であり院内感染などのリスクを減らすことができるとともに、早い社会復帰が可能です。以下のページにかなり詳しく記載しておりますのでよろしければ見ていただけると幸いです。
眼内レンズ脱臼のレンズ交換
水晶体を支えるチン小帯が弱かったりレンズの固定不良、外傷の既往などが原因で白内障手術時に挿入した眼内レンズの大部分が脱落した状態、もしくは瞳孔の中心からずれた状態を眼内レンズ脱臼といいます。
治療のためには、硝子体手術で眼内レンズを取り除き新たに眼内レンズを挿入する必要があります。
硝子体手術が必要なその他の疾患
糖尿病網膜症
糖尿病で高血糖の状態が続くと、毛細血管が豊富な網膜で虚血が起こって出血を起こします。また文字を判別するなど見る機能の重要な部分を担っている黄斑という部分に浮腫を起こすこともあります。これにより大幅な視力低下を起こします。さらに進行すると硝子体で大出血を起こす、硝子体が網膜を引っ張って網膜剥離を起こし、視力の大幅な低下や視野の大きな欠損、失明に至る可能性もあります。
網膜静脈閉塞症
網膜の静脈血管が詰まって閉塞し、網膜にむくみや充血が起きて見る機能が障害される病気です。高血圧や慢性的な腎臓病の既往症があると発症リスクが高くなり、加齢によって発症しやすくなることもわかっています。日本では40歳以上の約50人に1人が発症するため2.1%の罹患率であり、この数値は欧米やアジアの他の地区と比べても高めです。
硝子体出血
網膜の血管が破れて出血し、眼球内の硝子体に出血した血液がたまっています。出血がある場所や範囲によって、見る機能が大きく損なわれてしまうため、早急な治療が必要になります。
網膜剥離
網膜と硝子体は強く癒着することがあって、硝子体に引っ張られた網膜に裂け目ができてしまうことがあります。裂け目から網膜の裏側に液化硝子体という水分が入り込むと、網膜剥離を起こします。放置していると失明に至る可能性があるため、早急に受診が必要です。
当院での自験例です。この患者さんはなんとかぎりぎり、レーザー光凝固が間に合いましたが、これ以上進行すると手術・入院になるところでした、、、。
黄斑円孔
文字など細かいものを判別する役割を担った網膜の中心にある黄斑に穴が開く病気です。放置していると光の明暗や色はわかりますが、文字が読めなくなるなど社会的失明と呼ばれる状態になります。早期に手術を受けることで、視力回復できる可能性があるため、早急な受診が必要です。
黄斑変性症
もろくて破れやすい新生血管が、黄斑部を含む網膜下にできている状態です。新生血管から漏れる浸出液や血液によって深刻な視覚障害を起こします。加齢を原因とした加齢黄斑変性症、重度の近視によって発症する近視性黄斑変性症も、黄斑変性症に含まれます。